鳥居
知人に心臓ペースメーカーを付けている人がいる。若年性の心臓疾患ではなく、高齢で身体の各所がままならなく、心臓もそのひとつだからだ。
だから、一緒に出かける時には、ある程度の介護が必要になる。うどんを食べに行くのでも、まずタクシーを呼ぶ、タクシーの中からなじみのうどん屋に今から行くと連絡したりする必要がある。だから、一緒に出かけるには携帯電話が必需品だ。
もっと元気であっても、心臓ペースメーカーを付けている人、つまり健康に不安のある人には、緊急連絡等のため、携帯電話の必要性は高いと思う。だから、携帯電話の電波が心臓ペースメーカーに与える影響については、研究や対策が行われ、装着者も医師に相談するだろうし、適切な対応方法を行っている。
誤作動が起きても深刻な事態にはなることはない。携帯電話よりも影響の大きい万引き防止ゲートで倒れたという話も聞かない。けれども、誤作動は避けた方がいいに決まってる。
一方、混んでる電車の中や、隣の席で携帯電話を使われると迷惑なのだ。だけど、世の中には、他人の迷惑を気にしない人や気付かない人が多い。そういう人は私だけじゃないのだ。
それで、迷惑だと言わずに、オマエの行為で人が死ぬかも知れないぞと言った方が効くと思った人がいたのかも知れない。それで「携帯電話によるペースメーカーの誤作動」というレアケースを針小棒大に誤解させることが意図的に広がってしまった。一種の迷信だ。
ちなみに、携帯電話の電波とどちらが影響が強いのかは知らないが、警察無線を持っている鉄道警察官に「混んだ車内では警察無線のスイッチを切るのか」聞いたことがあるが、切らないそうだ。
その迷信がいいことなのか悪いのかはともかくも、その迷信を信じ込んでいる人は多い。列車内での携帯電話の使用の可否は、迷惑かどうかで判断すればいいのに、「心臓ペースメーカー装着者のため」と、レアケースをことさらに取り上げる人は、ペースメーカーの装着者のことをリアルに考えたことがない人だろうと思う。
いわば、ペースメーカーは「立小便除けの鳥居」なのだ。「立ち小便するな」では効かないから、鳥居を付けて、バチが当たるぞ。と言うわけだ。信仰心のある人なら、そんな目的に鳥居を使わない。たぶん、カミサマがバチをあてるのは、鳥居に立ち小便をした方ではなく、むしろ、立ち小便除けに使った方だろう。
こういう「鳥居」みたいな使いかたをされるコトバって、けっこう多いみたいだ。
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