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25/06/2006

おかずにする本

 去年の4月に「NIKITA」だの「LEON」だのという雑誌をネタにしたことがあった。
 この時に「勝ち組@元祖」ということを書いている。つまり第2次大戦直後の南米移民にあった「負けているのに勝ったと思いこんでいる人」を「勝ち組@元祖」と称した。同じように、事実と違う幻想を抱くことで、満足を得る。そういう仕掛けの雑誌だろうな。キャッチと本屋でパラパラ見た見出しで、そう思ったわけだ。
 つまり、一流の金持ちになれないのが分かった二流の金持ちを「必要なのは金じゃなくてセンスです」とくすぐって、センスがある人に属しているつもりにさせる。
 もう若くもないと思ってる人に「あなたに必要なのは若さでなくテクニック」とテクニックがある人に属しているつもりにさせる。
 本当にセンスのある人、テクニックのある人は、ハウツー雑誌なんか読まない。
 例えてみれば、13cmくらい(平均値らしいが、ユーエツ感を得るのは難しく、世の中のデカイ自慢によってかえってコンプレックスになる)のシロート童貞に「良かったわ。大きさよりもヤサシサよね。」っと言って通わせる風俗嬢のようなものだと思ったわけだ。
 というのも、この頃以前からよく感じてた「ヲタ気味人種のオレ様化、ヘイティスト化」とか、この頃によく言われていた「下流でありながら自分は優秀と思い込む」との相似性を考えていたからだ。
 なぜに、こんな1年以上前の話を持ち出して来たかと言えば、瑠璃子さんがNIKITAのことを書いていたからで、「他者を相対化することによって自らの立ち位置を決めている」煽り方が納得できないらしいのだ。
 で、今回は雑誌をパラパラ観てないので、瑠璃子さんの書いてることからの仮説だ。だから、実在の雑誌の話ではない。想像の「N1K1TA」だの「LE0N」の話だ。
 この雑誌は受け入れる人と嫌悪感を覚える人がいるんだろうと思う。元々、相対的にしか立ち位置を考えられない人だけに向けた雑誌じゃないか、という気がするのだ。絶対的な立ち位置を発見した人は今さら煽られても動じない。「N1K1TA」だの「LE0N」の読者は類家も乃南も知らないのだ。「たるをしらない」人に、足りてる仲間という幻想を与えるのだ、「勝ち組@元祖」にしなきゃいけないのだ。だから「負け組」を作らないといけないのだ。
 例えてみれば「嫌韓本」の世界だ。拠り所というか、自慢すべきもののない人に、君は優秀という幻想を与えるには、優秀でない例を与えなくちゃいけない。仮想劣等グループを作らないといけないのだ。なぜその理論がノーベル賞を受賞したかも理解できない人たちが「自分たちはノーベル賞を獲得した民族だ」、能も歌舞伎も観たことなくても「世界に誇る伝統芸術」と満足感を得るようにしなきゃいけないのだ。
 たぶん同じ構造なのだと思う。「若さ」や「お金」という測定しやすいモノサシじゃなくて「センス」や「テクニック」という、一見してわからないモノサシを用意して、立ち位置を相対化に決めるというより、意識するかしないかのどちら側に立ってるかに単純化し、反対側を攻撃してるだけじゃないかと思う。センスやテクニックって、意識して使うもんじゃないだろにさ。
 瑠璃子さんの例に出したヨシオ君は、自分の位置を把握しているのだ。つまり、負けを認めて、何とかしようとしているところだ。ヨシオ君が、自分は本当は優秀だけど社会に認められてないだけだというような幻想を持たない。自分の位置を認めて、そこを出発点にしているのだ。
 「N1K1TA」だの「LE0N」だののターゲット世代はたまたまだろう。20台男子向けの雑誌だって作れるのだ「君を求めているのは、プロダクションじゃなくて、プロジュクトです・Grand Bleu」とか。40台独身女子向けの雑誌「あなたに必要なのは論理ではなく情熱です・JEANNEDARC」とか。

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