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16/10/2006

ベタ・ネタ・スカ

 andy22さん@綾川亭も考察されて、一部で話題の「物心」だが、自己相対化の出来ない、と胃ってしまうと誰でも難しいことだし、出来ないことだが、その試みすらできない人という感覚なのかとか。「感じ」としては、物心の付かない大人という「そういう人はいる」のだが、どうもピッタリの言い方が難しい。
 それで思ったのが「私は常に嘘を言う」というパラドックス。こういう発言は「本当」か「嘘」か、それがわかるのが、ここでいう「物心」じゃないかと。このパラドックスは、言語表現として「嘘を言う」と事象として「嘘を言う」が対応していない、言葉と意味という違う次元というか位相で、同じ表現を使用しているだけの話なのだ。つまり、ひとつの表現の属する枠組みが2つあるだけ。
 先日来、書いている「枠組み」の話で言えば、たぶん「物心」というのは、抽象と具体の「枠組み」の違いがわかったとしても、抽象の中にある「枠組み」の違いに気が付かないということも言えるんじゃないかということ。
 「なぜ人を殺してはいけないか」、人を殺してはいけないという法律はない。けれども、人を殺すと罰するという法律や制度があって、人を殺すと不利益を被るように社会が出来ている。社会制度があるから「人を殺してはいけない」のではなく、「人を殺してはいけない」から社会制度があるわけだ。だから、社会制度について議論する際には「なぜ人を殺してはいけないか」などと考える必要はない。
 しかし、人を殺すと受けなければならない不利益として「殺される」が適切か、さらには「殺される」という不利益を回避する手段として「人を殺してはいけない」か、という問題に至れば、「なぜ人を殺してはいけないか」を考える必要がある場合もある。社会制度の問題ではない、文化への考察においては「なぜ人を殺してはいけないか」と考える必要がある。
 枠組みが違えば、考える必要のないこと、考える必要のあること、それぞれ違う。この枠組みの違いがわからずに「思考停止ヨクナイ」とか言っても、そもそも「物心」が付いてないわけで、いくら考えても、休むに似たりってだけだろう。
 「時うどん」という落語がある。東京にも移され「時そば」になった有名な噺なので、内容は書かない。この噺に出てくる2つのうどん屋は「松嶋屋」と「成駒屋」だった。「おまえとこ、松嶋屋か」「いえ成駒屋」がくすぐりになってたわけである。かつて落語を聞く人は歌舞伎も見た。というより、かつての上方の人の共通文化だった。ところが、若い落語家がタレント活動で人気を得て、そのファンが落語を聞きに行くようになると、歌舞伎は見ないが落語は聞くという人も多くなり、中にはこのくすぐりがわからない人もいる。それで「あたり屋」と「はずれ屋」という屋号で演じることも多くなった。
 「松嶋屋」も「成駒屋」もうどん屋の屋号としてもありうる。でも、並べることで「うどん屋」という枠組みではない全く別の枠組みと、二重の意味を持たせることが出来る。ひとつのネタである。
 一方、「はずれ屋」というのは「あたり屋」の逆というだけだ。あまりにベタである。だから、「松嶋屋」と「成駒屋」と同じように演じるとベタすぎてつまらない。
 しかし「あたり屋」はあっても、「はずれ屋」という屋号はありえない。それをしゃあしゃあと言ってのけるというのは、リアリティの枠組みを逸脱してしまうことだ。つまり、落語を相対化してしまうことにもなる。その逸脱の面白さを表現できれば、メタ落語としての面白さがある。「ベタ・ネタ・メタ」と言った方が語呂はいいんだけど、メタだと概念が広くなりすぎるので、本来の枠組みを外れてしまうので仮にスカの面白さと言おうか。この枠組みの逸脱の面白さを表現する、理解するのは「物心」が必要になる。
 文化が共有されればわかるネタに対し、世の中には単にベタだけで終わるベタもあれば、「物心」があるかどうかで、ベタとスカに分かれてしまうベタもある。
 こう考えると、うちのお客さんの笑いのセンスというのは、スカがけっこう好きなように見える。たぶん「物心」のない人には、ベタな連中と映っているんだと思う。

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