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01/08/2007

世襲がいけないのか

 若乃花と貴乃花という相撲取りがいた。世襲相撲取りだ。他にも世襲相撲取りはいるが、その比率は、たぶん世襲農業や世襲アパート経営者に比べると、圧倒的に低いと思う。
 その理由は想像できる。必要な投資の形が違うのだ。農業やアパート経営を行うために必要な投資の中には「農地」や「アパート」が含まれている。世襲だと、自ら投資を行うことなく「相続」という形で獲得できる。その分、投資を他に振り向けることができるわけである。ところが、相撲取りが利益を上げるために必要な最大の投資は「稽古」と「ちゃんこ」だ。「稽古」は相続ができない。「ちゃんこ」は他人であっても親方に提供してもらえる。つまり、親のフンドシで相撲を取っても、事業上のアドバンテージにはならないわけである。
 それでも世襲相撲取りがいるのは、相撲取りになりたいという子どもがほとんどいない中で、親が相撲取りだと、意思を持つ確率が高いからだろう。野球選手やサッカー選手のように、なりたい人間がもっと多い分野だと、世襲選手はもっと低比率だ。
 余談はともかくも、世襲政治家の場合を考えてみる。世襲政治家というのは、選挙に有利だそうだ。後援会組織や知名度、さらには資金源を「相続」できるからである。ということは、政治家が行うべき「投資」の大きな部分が免除されているということだ。そういった選挙対策のための「投資」を政治活動への「投資」に振り向けることができる、結果的に政治活動のグレードを高めることができるはずである。
 つまり、後援会を作ったり、新たな支援者の獲得に労力や時間を割く代わりに、世界や日本、産業や経済の情勢、政策立案について研究し、各分野の専門家との意見交換を行い、他の政治家や官僚や国民への説得力に磨きをかけることができる。だから世襲政治家には、高度の政策立案力や説得力のある政見などが期待できるわけだ。
 タレントだって、選挙への投資は軽減できる。けれども、タレントとなるにあたっての投資が必要である。組織政党の政治家も選挙への投資は軽減できる。けれども、組織への貢献という投資が必要になる。
 アナウンサーが「アメンボ赤いなあいうえお」と言い続け、組織政党の人が「本当がみえるくらしに役立つしんぶんとってください」と言い続け、宗教団体の人が「ナンミョーホーレンゲーキョー勝利勝利」と言い続けている間に、世襲政治家は、政策を学ぶことも、政見を説明するトレーニングもできたわけである。もっとも宗教団体の人は、そもそも政策で評価されているわけじゃないので、その必要もないのだが。
 このように考えているので、世間には世襲政治家に対する批判もあるが、私は世襲自体を否定しない。
 世襲でない政治家から見れば、競争という面で公正ではないかも知れないが、対抗するためには、世襲政治家とのハンディを埋めるに充分な能力が必要になるわけで、一般の人間から見れば、むしろ、政治のグレードを上げる方向に働く「不公正」であるから、歓迎できる。
 ただし、いいことだけではない。問題点もある。
 世襲政治家は政治活動のグレードを高めることができるはずというのは、「コストパフォーマンス」が一定だという前提がある。同じ労力なら同じ効果があるという前提だ。ところが、そのコストパフォーマンスが極端に悪い場合でも、選挙に有利であるために政治家になりうる。
 世襲政治家であるということで、政治家としてより大きな「自己投資」が可能だったにもかかわらず、政策やビジョンの立案能力や説明力、判断力など、蓄積が必要な能力は全く評価されず、各界の二流以下の人物としか交流がなく、支持者からも、誠実だとか理念だとか、蓄積の不要な面でしか評価されない。そういう世襲政治家がいるならば、それは基本的な素養で劣っているということであり、それでも政治家になってしまう。
 けれども、それは、あくまで個人の基礎的な知的能力が劣っていることが問題であって、世襲政治家だから問題なのではない。
 ギャル曽根のように、いくら食っても太らない人は特殊な例で、多くの人は多く食べれば、それだけ太るのだ。普通は労力相応にスキルを高めることができるのだ。いくら世襲政治家に、知的ギャル曽根がいるからと言って、世襲政治家全体が否定されるべきではないと思う。

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