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29/09/2007

ちょっと気になる記事

 F1日本GPの開催地となった静岡・小山が「経済効果」が実感できずに「浮かぬ顔」だとか。
 期間中に人口約2万人の町に約28万人の観客が来る。同町だけで経済効果は約7億円という試算があるものの、交通渋滞を避けるため、主催者が「チケット&ライドシステム」を採用し、来場者は駅や場外駐車場を指定され、そこから無料のシャトルバスで会場に向かうことになっており、町内の駿河小山駅に降りる来場者はわずか500人と予想され、大半は町を素通りするため、同町の観光協会や商工会から「バスは会場と町の外を行き来するだけ」と不満の声が上がり、町商工会会長は「我々が手がけるのは大会スタッフの弁当くらい」と表情がさえないとか。
 なお、富士スピードウェイや静岡大によると、経済波及効果は国内で約135億円(静岡県内は約32億円)、同町分は約7億円で、会場内での売り上げなどを見込んでいるが、地元の人たちには実感できていないということだ。

 さて、ハナシは突然、青森に飛ぶ。新しいデータがなく、2000年時点だが、青森県の「コンピューターと付属機器製造」「旅館・ホテル」「エンターティンメント産業」は、それぞれ経済規模はほぼ同規模で800億円弱だ。ということは、この3つの産業で、同じくらい青森県が潤ってるかというと、そうとも考えられない。
 まず、800億年のうち、従事する人の給与にどれくらい行くかと言えば、コンピューターだと76億円、旅館・ホテルだと233億円、エンターティンメント産業だと190億円だ。国際競争の激しい分野だと、アジア地区でも割高の人件費の比率を低く押さないとやっていけないから当然だ。それぞれの産業は、当然ながら、他の産業から原材料を調達している。コンピューターだと、同じ「コンピューター産業」、「半導体素子・集積回路」、「電子部品」の3分野から、それぞれ、120〜150億円の材料を調達していて、そして、これらの産業の青森県内での自給率は60パーセントくらいだ。一方「旅館・ホテル」は、農業から12億円、食品工業から52億円、飲料製造から23億円、商業が47億円、金融・保険業に47億円と、かなり分散している。そして、自給率は、飲料こそ30%ちょいだが、他は70%を超えている。農業は85%、金融・保険は97%だ。
 つまり、同じくらいの産業規模でも、県内がどれだけ潤うかとか、潤い方も違うわけだ。県内の精密機械工場も旅館・ホテルもない集落でも、農業や食品工場があれば、旅館・ホテル業によって潤うわけであり、誰かが集落外の産業に勤めていれば、その産業で潤うというわけで、旅館・ホテル業の方が、その機会が多いということになる。
 経済については素人なのでよくわからんのだが、経済効果というのは、どれだけ売れるかという「額」だけじゃなくて、売れたモノやサービスの流れがどうなっているかが、むしろ地域にとって、大事なんじゃ、という気がする。
地域振興と整備新幹線—「はやて」の軌跡と課題 ここで青森県を例にしたのは、先日に「地域振興と整備新幹線—「はやて」の軌跡と課題」という本を読んだからなのだが、新幹線の青森延伸によって、いろんな産業の規模に影響を受けると思う。でも、考えないといけないのは規模だけではなくて、その流れじゃないかという気がする。単純に、延伸によって旅館・ホテル業の規模が拡大するということじゃなくて、増えるであろう宿泊客と、泊まらずに帰れるようになった人がいて、それぞれによって、旅館・ホテル業の人件費や原材料費がどう変わるか、また、どう変えるかを考えないといけないんじゃ?ということだ。秋田だと新幹線の直通によって、買い物客の流出が激しいという。おそらく、青森だって、いろんな分野で流出と流入が起きるんだろうと思うけれど、産業規模が減る部分と増える部分じゃ、その内容が相当に違っているだろうし、原材料の構成とかも違うはずで、そのあたりが、これまで延伸した所でどうで、だから青森はどうするというのが必要なはずだ。この書によれば、そういうことは、これまであんまり考えられてこなかったようだ。それで、著者は、書きたいことの半分も書けてないと述べてられるんで、そういう方面をこれからまとめられるのかも知れない。

 静岡・小山の話に戻ると、この人口2万人の町では、6千人が町外で働いている。その内訳はわからないけれど、町内を観客が素通りし、町内にカネが落ちずに町外だけが潤ったとしても、この6千人を通した経済効果というはありうるわけである。
新聞写真 さらに、元の記事では「いかにもF1の経済効果に無関係そう」なおじさんの写真が写っている。商工会が手がけるのが大会スタッフの弁当だけでも、数日の需要のための設備投資は出来ないだろうし、臨時に人を雇っても数日だ。ところが、このおじさんが半年かけて作る米は、観客が町外で購入する弁当や食事に使われるかもしれないわけである。同町分の経済効果が7億円ということは、700万円の地方消費税があるということになるのだが、これって、町に行かずに出店業者の地元に行くってことだろうか。
 結局、経済波及効果というのは、その地域でいくら使われるかだけじゃなくて、使われるうち、いくらが回ってくるかという話だから、町内で使われる金が少なく、経済効果が「実感できない」ということじゃなくて、観客が素通りするならするで、実感できなくたっていいんで、回ってくる分をどう増やすか、どう考えていたんだろうという方が問題じゃないかと思う。

 さて、このおじさんは当日はどうするんだろう。交通が混雑するんで野良仕事を休んで、ウチにいて、爆音がうるさいんで窓を閉め切ったために、季節はずれのクーラーをかける。休みにしたので、昼間から一杯やるかも知れないし、近所のカラオケに行くかもしれない。そうすると必要になる電気代や、酒代、カラオケ代も「経済効果」になる。
 例えば、東京で大規模イベントをする。遠くの知人や親戚が来て泊まるかもしれない。そのために布団を買ったり、クリーニングをしたりも、このイベントの経済効果ということになる。「経済効果」がいくら、というと「それだけ潤う」と考えがえちなのだ。この例だと確かに東京の布団屋は潤うが、それはイベントのために余計に払う都民がいるからだ。イベントのために、土建工事や広告キャンペーンをすると、その費用も「経済効果」だから、すればするほど「経済効果」は大きくなる。でも、そのための金を払っている人は、イベントに来るよその人じゃないわけである。もちろん、友人が来るんだから、布団代を払うだけの価値があると思えればいいんだけど、こんなものまで、ということもあるはずだ。「経済効果」は、その行き先とともに、そもそも誰が出してるのか、にも注意した方がいいと思う。

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