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22/11/2007

都鳥

 数日の間に「のさばり」だしたユリカモメであるが、こういう好意的でない表現を使うのは、元々はいなかったから、というだけではない。
 このユリカモメ、別名を「都鳥」という。有名なのは伊勢物語だ。

なほ行き行きて、武蔵の国と下つ総の国との中にいと大きなる川あり。それをすみだ川と言ふ。
その川のほとりに群れ居て、思ひやれば、限りなく遠くも来にけるかな、とわびあへるに、渡し守、「はや舟に乗れ、日も暮れぬ。」と言ふに、乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。
さる折しも、白き鳥の、嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。
京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡し守に問ひければ、
「これなむ都鳥。」と言ふを聞きて、
名にし負はば  いざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
と詠めりければ、舟こぞりて泣きにけり。
 「京には見えぬ鳥なれば」ということが話の前提になっているわけである。では、京にいないのになぜ「都」ということになるが、かつての「都」は京ばかりじゃない。万葉集に有名な歌がある。
布奈藝保布 保利江乃可波乃 美奈伎波尓 伎為都々奈久波 美夜故杼里香蒙
船競ふ 堀江の川の 水際に 来居つつ鳴くは 都鳥かも
 大伴家持(718〜785年)の歌だから、都というのは平城京になるし、堀江の川にいるわけだから、都鳥の由来は難波の宮かも知れない。いずれにしろ平安京よりも昔のことだ。
 この万葉集の都鳥を、現在の和名をミヤコドリ、Haematopus ostralegusという鳥だとの説も散見されるが、そうなると名前が再逆転したことになって不自然だし、この和名は江戸時代の学者がコジ付けたという説の方が信用できそうだ。
 この2つの歌が引用されているのが、謡曲の「隅田川」。
我もまたいざ言問わん.都鳥。いざ言問わん都鳥。我が思い子は東路に。ありやなしやと。問えども問えども答えぬはうたて都鳥。鄙の鳥とやいいてまし。げにや舟競う。堀江の川の水際に。来居つつ鳴くは都鳥。それは難波江これはまた.隅田川の東まで。思えば限なく。遠くも来ぬるものかな.さりとては渡守.舟こぞりて狭くとも.乗せさせ給え渡守.さりとては乗せさせ.給えや。
 この「隅田川」は歌舞伎舞踊にもなり、清元節の代表曲にもなっているようだ、さらに「隅田川」というか梅若丸伝説は芝居にも取り入れられ、特に、釣鐘建立を「やるやる」詐欺というかカンパの流用で暮らしている法界坊の話「隅田川続俤」は平成中村座の公演でよく知られたわけである。
ユリカモメ それで都鳥といえば隅田川、ということで巨大な金のウンコが似合う鳥であり、ユリカモメは「東京都の鳥」になり、お台場行きの電車の名前にもなっている。
 ところで、難波江、隅田川にいても京には見えぬはずのユリカモメだが、ここ30年あまりの間に大挙して鴨川に飛来するようになった。ネット上には、このユリカモメが京都市の鳥という誤解まで見られる。
 別に害があるというわけではないが、「いない」ことで知られた鳥だけに、大勢いるのには抵抗がある。でも、幸いにしてここ10年は減少しているようだし、一昨年からは組織だった給餌も中止されたようだ。

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