かわくまもなし
「廓文章」の伊左衛門、文字を書いた着物で出てくる。これは、故紙を着物に仕立てた「紙衣」を模したもんで、つまりは落ちぶれて、そんな着物しか着られないという表現になっている。
今の子が、洗いざらしや破れたり擦り切れたりというデザインの服を着ているように、そういうビンボーの象徴である反故紙の「紙衣」を模した着物をわざわざ作るという人も昔にはおったそうで、反故染めといったとか。
百人一首の書かれた反故染めの長襦袢の小咄があって、胸のところに「こひぞつもりてふちとなりぬる」、袖のところに「わがころもではつゆにぬれつつ」肩のところに「みかさのやまにいでしつきかも」とか。
尻に「けふここのへににほひぬるかな」、帯の下、上前が「あふさかやまのさねかずら」。そして、めくってみた下前には「ひとこそしらねかわくまもなし」。
それはともかく、「あふさかやま」ではないけど、サネカズラ。
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