03/01/2006

阿片王―満州の夜と霧

img045 さて、先日のエントリーで半分くらいだった「阿片王」であるが、昨年中に読み終えている。内容については、多少、期待はずれのところもある。例えば、満州時代の活動だが、半世紀以降の取材の限界だからしようがないだろう。里見が携わった偽札や阿片による工作の内容にしても、その恩恵を受けた東条英機や岸信介との関係にしても、里見本人が秘匿して死んだらしい、ということがわかったわけで、具体的な内容はわからない。
 むしろ、著者の興味の中心も、里見の「シゴト」よりも「人間」のようだ。妙に、里見のことを良く書いているように思えるのは、対象への好奇心の所以だろうし、彼の金に群がった岸信介や笹川良一、児玉誉士夫らとの比較からだろう。そして、その人物像が浮かびあがったかというと、多くの謎は残されたままだ。
 読んで思ったのは「わからないことを調べる楽しさ」だ。一連の取材を著者が楽しんでいるように思えるのだ。例えば、里見の周辺人物についても執拗に取材を続けるのだが、本来の取材目的からは逸脱していってるようにしか思えない。それでも、調べることや、何かがわかることが、とても楽しそうなのだ。
 その気持ちはわかる。何か調べごとをしていて、答えが得られたわけでもないのに、些細な発見があると、嬉しいものだ。検索してもヒットしない事項が、他の関連語句でチェックしてみたら発見できた。その程度でも嬉しい。
 だから、取材先に出かけ、関係者に会い、資料をあたり、そして、何か発見があると、その楽しさの「中毒」になり、本来の調査から逸脱して行くような感覚だ。けれども、読んでいてその楽しさが伝わるので、何となく共感してしまう。内容の隔靴掻痒ぶりにかかわらず。
 ノンフィクションというより、半世紀以上昔の闇につながる世界への「紀行文」のような感じだった。

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23/12/2005

ぶらーん記念日

img045 12月23日は、東条英機らが絞首刑になった記念日だ。その東条英機や岸信介とかの資金源が阿片であり、その取引を行っていたのが通称「里見機関」というらしい、ということは以前から知っていた。
 けれども、その「里見機関」の里見甫のことや、東条英機、岸信介への資金の流れなどがどうなっていたのかとか、そんなことまでは知らないので、読みはじめてみた。
 それで、記念日の今日までに読み終わるかと思ったのだけど、まだ半分くらい。

12月28日追記
 他のblogで、現天皇の誕生日に処刑を執行したのが陰険だという記事を見かけた。ゾルゲが処刑されたのがロシア革命の記念日だったので、死刑囚の記念日に処刑するというのは、当時は一般的なことだと、ろくにチェックもせず思っていたのだが。
 ゾルゲを処刑した日本と、戦犯を処刑したアメリカ軍だけが陰険だったのか、一般的なことだったのか、どっちなんだろう。

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